この記事では、「風力発電について勉強しよう!」と思った時に、どの書籍を手に取っていいか迷ってしまった方にお勧めする本を7冊、ご紹介いたします。
(※風車好きの筆者は、これら全ての本を手に取って内容を確認しています。)
「トコトンやさしい風力発電の本」 牛山泉
この本はタイトルの通り、風力発電についてひたすら「やさしく」書かれています。
風力発電の専門家である著者があえて難解な言葉を避け、ほとんど知識のない方でも読みやすいよう写真や絵が多用されており、随所に分かりやすくするための工夫がされています。
やさしい言葉で書かれてはいますが、風力発電のメカニズムや風車の種類、そして風車建設の流れまで解説があり、ビジネスで風力発電に携わる方にも知っておきたい内容になっています。
風力発電の入門書としてだけでなく、これからしっかりと勉強したい方も含めて、最適な一冊だと思います。
トコトンやさしい風力発電の本 (B&Tブックス―今日からモノ知りシリーズ)「風力発電の歴史」 牛山泉
上で紹介したものと同じ著者の本ですが、こちらは風力発電の歴史を包括的に記述した、専門色の強い一冊になっています。
世界と日本の風力発電について、動力用の古典風車から始まり近年の洋上風力発電に至るまで、参考文献を明示しながら詳細に解説されており、英語のレビュー論文に相当する価値があるものになっています。
正直に言って風力発電に詳しくない方には敷居が高い面もありますが、この一冊を読み終えた頃には、十分に風力発電の専門家を名乗っても良いぐらいの情報量です。
この本を読む事で、風力発電が衰退の時期を経て再度脚光を浴びるようになった流れを、時系列で理解できるようになります。
風力発電の歴史について、全体像を知りたい方には必読の書になっています。
風力発電の歴史「わかりやすい風力発電」 西方正司
本書の第一章は、大気中の二酸化濃度が上昇し、世界の年平均気温が上昇を続けている事を示す気象庁のグラフから始まります。こういった世界的な温暖化に対する処方箋として再生可能エネルギーである風力発電の可能性を提示し、専門でない方にも分かりやすく解説するために書かれている本です。
風車の形と原理から、各種風車の構成や特徴など、技術的な部分を詳細に解説しているため、風力発電に携わる現場の技術者・研究者の方にも読み応えのある内容になっています。
これから風力発電の技術的な部分を勉強したい、という方にとっては、最適な一冊になるのではないでしょうか。
(※この本は2013年の発刊ですが、最後の章では洋上風力発電についても解説されており、日本における洋上風力発電の遅れを指摘しています。2020年代になって、日本でもようやく洋上風力発電の議論が高まってきたように感じますが、随分と周回遅れに感じてしまいます。)
わかりやすい 風力発電「日本の知らない風力発電の実力」 安田陽
風力発電については「世界の常識は日本の非常識、日本の常識は世界の非常識」であるという認識から、しっかりとデータやグラフに基づいて風力発電に関する世界の現状を正しく伝えることを目的として書かれた一冊です。
風力発電にまつわる多くの誤解と神話について、一つ一つ解きほぐすような丁寧かつ精緻な解説は、初学者には少し難しい面もありますが、読み応えがあります。
特に本書は、紙面の半分程度を第三章の系統連系の解説に割いていることが特徴的です。マスコミなどでも用いられる「風力発電は風まかせ」という表現について正面から議論しています。
そもそも電力需要も変動するものであり、「変動する電源をつないでも大丈夫なように電力系統全体をマネジメントする」という発想が必要であることなど、それなりに風力発電に詳しい方でもハッとさせられる内容ではないでしょうか。
これからより一層普及が見込まれる風力発電について、「日本全体でどのように最適化するか」という点について理解したい方には、是非目を通しておきたい一冊です。
日本の知らない風力発電の実力「地域型風力発電」 斉藤純夫
再生可能エネルギーに対する期待や、国や自治体の支援の気運が高まる昨今、この本は地元で具体的に風力発電に取り組んでみたいという方への指南書であり、そういった方々が理解しておくべき事柄、注意点が具体的に解説されています。
この本の著者は、元々は石油会社に勤務していた時から風力発電に関わっており、その後風車に魅せられてウィンドコネクト㈱という会社を設立し独立しています。
このような経歴を持つ現場感覚のあるビジネスマンだからこそ、風力発電をビジネスの観点から見た記載が多く、「しっかりと利益を生み出す風力発電」という観点を学ぶことができます。
現場に根差した具体論が多く、例えば「風車は1回転で約50円」「2,000kWの風車で6億円の設備投資が必要」といったように、定量的な数値で示された解説は非常に分かりやすいです。
机上の空論で風力発電を議論するのではなく、「実際に住んでいる地元に風力発電を設置したい!」という熱い気持ちを持っている方には、最適な一冊となるのではないでしょうか。
こうすればできる! 地域型風力発電―地元に利益を生み、愛される風車の実現― (B&Tブックス)「今こそ、風力」 山家公雄
本書は発刊が2012年2月と、東日本大震災の直後に出版された本であり、多分にその影響が盛り込まれています。
原子力一辺倒であった日本のエネルギー政策について、国産の再生可能エネルギーへのシフトの必要性が説かれており、世界動向や風車製造における産業のすそ野の広さを考えれば、「もっと日本でも推進されるべき」という内容はうなずけるものだと思います。
大型風車1基の部品点数は1~2万点にものぼり、ガソリン車の3万点、電気自動車の1万点にも匹敵することから、ガソリン車の今後の減少の雇用の受け皿になるのではないか、という提言が含まれています。
風力発電について、本書が書かれた2011年頃から既に日本の出遅れを指摘していますが、10年以上経過した現在においても、日本の産業情勢はそのようなシフトができているかというと、残念ながらそのようになっていません。ですが、当時にこのような先見的な提言が行われていたことは注目すべきだと思います。
国家戦略としての高い視点で書かれた本であるため、一般人には難しい面もあるかもしれませんが、「風力発電をどのように位置づけていくか」を考えるうえで、とても有用な一冊だと思います。
今こそ、風力 (エネルギーフォーラム新書)「風車のある風景 風力発電を見に行こう」 野村卓史
純粋に「風車のある風景を楽しむために、風力発電を見に行く」ことをコンセプトに書かれた一冊です。
2002年に出版された本であり、少々情報が古くなっている面は否めませんが、それでも風車見学をする際に知っておきたい内容がコンパクトにまとめられています。
また、前半の40ページは風車の風景写真であり、大きくそびえたつ風車の写真を見るだけでも、風車見学のワクワク感を感じることができます。
これから風車見学に行こうと思っている方も、事前に知っておくとさらに風車見学を楽しめる予備知識が網羅されています。
やはり少し古い本ですので、風車マップの地図などは情報が古くなっているため、そのような場合には本サイトの風車位置を参考にして頂いた方が正確だと思います。
風車のある風景―風力発電を見に行こう小説:「風の値段」 堂場瞬一
本書は、風力発電に関する技術書ではなく、洋上風力発電を題材にした小説です。
風力発電に関する技術情報流出事件が、世界を舞台に巻き起こされます。
すでに中国の方が研究環境が整っていること、技術者・研究者が内側に抱える想いなど、風力発電の研究開発・技術開発に携わる方にとっては、頷ける部分も多いのではないでしょうか。
あくまで小説なので、技術書を読み疲れたときなど、手に取ってみてください。